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ノエル軍曹のお勧めの一冊 TOP  >  時代・歴史小説

冲方 丁 天地明察

天地明察

こんばんは、ノエル・ギャラードです。

今夜紹介するのは冲方 天地明察です。

本書は角川書店から2009年11月30日に発行され、第31回吉川英治文学新人賞、第7回本屋大賞を受賞し,第143回直木賞の候補となったうえに、第7回北東文芸賞や第4回舟橋聖一文学賞といった様々な賞を受賞した作品ですので、書店に平積みになって大々的に売られているのを目にされた方も多いのではないでしょうか?

ちなみに著者の冲方 は「マルドゥック・スクランブル」などの作品で知られてはいましたが、この天地明察が著者にとっての初めての時代小説だったことから、時代小説しか読まないような方の中には
「新人なのにいきなりすごい作家が出てきたものだ」
と驚かれた方も多かったと聞きます。

私はもともと、「マルドゥック・スクランブル」等、冲方 の作品をいくつか読んでいましたので、この天地明察についても
「変わった題名のSF小説だな」
と時代小説だと意識せずに購入したものですから、中身を読んで驚いたことはいうまでもありません。

本作の主人公である、渋川春海は代々の囲碁の家である安井家に当主、算哲の長子として生れ、自身も囲碁の才能に恵まれながらも、囲碁よりも算術や天文暦にのめり込み、ついにはそれまでの日本の政や農作物の植え付けなど、様々な場面で用いられていた宣明暦を、授時暦をベースに日本向けに改良を加えて自らが考案した、大和暦への転換を果たすなど、囲碁棋士としてよりは、天文暦学者としての渋川春海の生涯を描いた、切り合いの無い時代小説となっています。

特に私が好きなのは、第二章での、これも渋川春海と同じく実在する数学者、関 孝和との算法勝負の場面名のですが、剣術ではなく算術による真剣勝負、というのが新鮮で、あっという間に読んでしまいました。

囲碁棋士や将棋棋士という人たちは基本的に理詰めでありながらどこか天才的な閃きによって局面を変えていくようなところがあり、現代の囲碁界では、七大タイトルグランドスラムを果たした趙治勲二十五世本因坊や、山下敬吾本因坊、また将棋会においては将棋界で初の7タイトル独占を達成した羽生善治名人などは、やはり常人には思いもつかないような思考回路を持った天才であり、渋川春海もそういった人種だったからこそ、新たな暦の作成という大事業を完遂できたのではないかと思います。

私は将棋が好きなので囲碁や将棋の話題が出てくるとうれしくなってしまうのですが、そうでない方にとっても、どこかSF的な要素を持った新しい時代小説として楽しんでもらうことが出来るお勧めの一冊です。


天地明察天地明察
(2009/12/01)
冲方

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[ 2011/02/06 19:32 ] 小説 時代・歴史小説 | TB(0) | CM(0)

小太郎の左腕

小太郎の左腕

こんばんは、ノエル・ギャラードです。

今夜紹介するのは和田竜小太郎の左腕です。

本作は2009年11月に小学館から刊行された和田竜の三作目となる長編小説です。戦国期における西国の国人領主達の領土争いを国人領主、戸沢利高の家臣、林半右衛門の視点から描いており、序盤は林半右衛門と児玉家の武将、花房喜兵衛の力比べ、といった内容でエンターテイメント性の高い時代小説といった感じの作品なのですが、そこは「のぼうの城」で鮮烈なデビューをした和田竜のことですから、ただの時代小説で終わるわけがありません。

中盤からは、国人領主達の領土争いが、特異な火縄銃の才能を持つ十一歳の少年、小太郎の出現によってそれまで児玉家優勢であった戦が一転して戸沢家の優勢に変わるというめまぐるしい展開となっていくのですが、この小太郎がまさに戦国時代の狙撃手、それも「最強の狙撃手」と言っても良いくらいの凄まじい腕を見せてくれます。

しかし、この小太郎の腕前を語る前に、戦国時代に狙撃手が存在しえたのか?という疑問もあるのですが、戦国時代の狙撃といえば、杉谷善住坊による織田信長狙撃が有名です(結果は失敗)しかし当時の火縄銃には旋条(ライフリング)は施されておらず、鋳物で出来た銃弾を火薬を詰めた銃身に押し込み、火縄で着火すること火薬の爆発によるガス圧によって弾丸を押し出す、という単純な仕組みであって、その命中率は現代の狙撃銃と比べると全くお粗末なものだったはずです。

まあ小説だから、と言ってしまうと実も蓋も無いのですが時代小説に少年狙撃手というギミックを持ち込み、しかも林半右衛門、花房喜兵衛といった骨太の武士を配置することでギミックに頼らずとも、正統派な時代小説としても楽しめてしまうあたりはやはり和田竜作品らしさが存分に発揮されていると言えます。

この小太郎は戦国時代における鉄砲界のエリート集団「雑賀」の一族であることが作中で語られるのですが、ゲーム、「信長の野望」や宮下 英樹の「センゴク」等での活躍を見るにつけ、「雑賀」の名前は当時も相当だったことが伺えますね。

この小太郎をめぐる悲しい争いは実際に読んでいただくとして、時代小説も、スナイパー物もどちらも好きだと言う方にはピンポイントにお勧めできる一冊ですよ。


小太郎の左腕小太郎の左腕
(2009/10/28)
和田 竜

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[ 2011/02/04 22:24 ] 小説 時代・歴史小説 | TB(2) | CM(0)
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