こんばんは、ノエル・ギャラードです。
今夜紹介するのは福野礼一郎、
極上中古車を作る方法 (別冊CG)です。
本書は、「CAR GRAPHIC」誌上で2003年8月号から2004年5月号にかけて連載された企画に、加筆、修正を加えて2004年に二元社より発行された著者、福野礼一郎の550時間に及ぶDIYレストアの完全記録となっていますが、第一章で中古のロールスロイスを購入し、第十二章で試乗するまでの前編を通して、著者の自動車に関する膨大な雑学、知識、そして偏執的な自動車に対する愛情を、福野節とも言える辛辣かつユーモア溢れる口調で語った、単なるレストア記録を超えた自動車文化の啓蒙書ともいえるような作品となっています。
まず、表紙の写真のように、1台のロールスロイスを、その内装をドアの内張りにいたるまで徹底的に分解し、外装や機関部おいても同様の執念深さで徹底的にバラした上で、新車の状態では本来どう有るべきか?といった基本に忠実に、本当に見事なレストアを見せてくれるのですが、やはり、この福野礼一郎という人物は第一級の変態といっても差し支えの無い人物なのではないでしょうか?
著者の他の著作を読んでも一貫して感じるのはその仕事に対する妥協の無さ(本人に言わせればそれでも妥協はあるのかもしれませんが)自動車評論家という枠を超えたプロフェッショナルな姿勢を感じずにはいられません。
本書にしてもそうですが、自動車修理や販売を生業としているわけではない著者の、確かなレストアの腕と、様々な人脈を持って、バラバラに分解されたロールスロイスの部品の一つ一つが輝きを取り戻していく過程は読んでいて非常に爽快な感じすらしますし、端々に登場する、ロールスロイスにまつわる薀蓄や、レストア手法についての解説も、著者が自動車を評論するうえで、自動車メーカーに対するセールストークではなく、本当に自分の感性で評論している数少ない評論家であると私に信じさせるには十分に自動車文化に対する愛情を感じさせてくれます。
特に面白いと感じるのはロールスロイスの灰皿の補修について2ページを割いていて
「灰皿やその周辺が汚いクルマはたいていクルマの程度も悪い」
と灰皿のめっきの錆落しの為にショットブラスト業者へ依頼したりと、本当に細部に至るまで、徹底的としか言いようの無い仕事を見せてくれます。
中古車販売業者などが、仕入れた車に対して皆これくらいの処理をしていたら間違いなく倒産してしまうと思えるそれらの工程は、著者の言葉を借りるなら、やはり極上の中古車は自分で作るしかない。ということになるのでしょうが、私には絶対に無理です。
自動車が好きでレストアや修理に興味のあるかた、自分の愛車を一生乗り続けるために一度は徹底的に直してみたいなんて思っている方にはぜひとも読んでいただきたい一冊です。
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